推薦図書

 私(和多)がこれまでに読んで、研究・考え方・人生になんらかの影響を受けた書籍から、面白いと思えた書籍まで色々とピック・アップしました。

 特に学部学生にお薦めです。 

 また、私の研究室で研究をしてみたいと考える方はどの本でも結構です、一度以下の推薦図書を読んでみてください。これらの本を読んで、興味・興奮を感じた人、仲間として、きっといっしょに研究ができると思います。

『やわらかな遺伝子』

『脳はこうして学ぶ:学習の神経科学と教育の未来』

久々に、「この本はこれからも何度も読み返すだろうな」と途中読みながら思えた。実際、一度読んで、すぐに読み直しているが、一回目に読んだときには意識しなかった新しい視点を得る経験をしている。

 医学が、経験をもとにした医術から生命科学を土台としたサイエンスの一部となったように、教育も同じ軌跡をたどるだろうし、それを自分が行っている研究を通して、少しでも貢献、牽引したいと思う。私の研究室で研究するメンバーには是非読んでもらいたい本です。

 こんな本を書ける人(研究者)はあまり多くはない、と思いたいくらいに、これまで自分がおぼろげに考えてきたことを、よりはっきりと、深く、広く、そして統合的に考え、それをこういう本で著している。と同時に、これまでの研究で自分の手を動かし、そこから重要だと考えてきたことがまだニッチのように残っていることにも気づくことができた。まだまだ、やれるぞ。

(2021, November 19)

 

『時間 愛 記憶の遺伝子を求めて』

『スポーツ遺伝子は勝者を決めるか?』

『心はどのように遺伝するか』

『遺伝子・脳・言語』

『遺伝マインド』

『「こころ」は遺伝子でどこまで決まるのか』

『脳を鍛えるには運動しかない!』

『双子の遺伝子』

『Principles of Neural Science』

カンデル神経科学

『脳の可塑性と記憶』

『脳のなかの幽霊』

『脳のなかの天使』

「ヒトはいかにして人となったか

 :言語と脳の共進化」

「越境する脳」

「シマウマの縞 蝶の模様」

『生命の歴史は繰り返すのか?』

私は中学生のとき、古墳時代を研究する考古学者になりたいと思っていた。2019年に世界遺産登録された大阪堺に現存する百舌鳥古墳群がある中学校の郷土部という文化系クラブに入って、調査研究というものをはじめて体験した影響も強かったと思う。しかし、歴史を研究することの難しさというか、歯がゆさに気がついた。歴史の一回性、再現検証の問題である。人と人、文化と文化の交流など、そのとき、その場で起こったことにゆえに歴史が形成される。その時間の流れを後世になって、あれこれ推測して精度・深度を上げても、いつまでも「多分そうだったのだろう」ということしか言えないだろう、それをもって自分が分かったと納得できないと思えた。故に、考古学者になろうとする気持ちがしぼんでいった。

 進化の研究も、ある意味同じだと思っていた。多分、未だに多くの生命科学者も進化に関してそう考えているケースがあると思う。生命の歴史である進化を本当の意味で再現性をもって研究できない、と。しかし、このテーマ「進化(生命の歴史)は繰り返すのか?再現性があるのか?」ということそのものが、進化研究の中心的な命題だったのか、と気づかされる内容である。どのような実験をして、進化の再現性を検証しようとしているのか、それに挑む研究者たちの哲学・振る舞いに心が躍る。そして、偶然と必然の狭間を行き交う生命の不思議さ・奥深さに、心が奪われる。

 進化に興味がある人のみならず、遺伝子・ゲノム、行動、フィールドワーク、自然と生き物が好きな人には一読を薦めることができる内容です。きっとヒトも含めた生き物・その研究にあらたな視点を提供してくれると思う。少なくとも、私はこの本をネタに1コマ授業をして、学生の反応をみてみたいと思った。

 

(2022, June 29

 

『ダーウィンのジレンマを解く』

「ヒューマン:なぜヒトは人間になれたのか」

『迷惑な進化』

研究者を目指す人へ

『生命科学者になるための10カ条』

『精神と物質』

メンター・チェーン ─(ノーベル賞科学者の師弟の絆)

これまで行ってきた研究や研究室を運営する過程で、自分がとった行動・決断は、確かにこれまでに自分が所属してきた研究室、及びここでいう研究の師匠の影響は間違いなく受けている。落語の世界では、「師匠選びも芸のうち」という。これは、研究の世界でも指導教官を選ぶ際に通じるところがあると思う。しかし、実際は、インターネットや様々な情報、ネットワークを駆使して、世界中の研究者の実績と人柄を見比べて、研究室を選ぶ学部学生なんて皆無だ。博士課程に進学する学生なら、そういうことをやって大学院の研究室を選ぶ学生は存在するにはするが、その数はとても少ない。ポスドク先を選ぶ頃になると、やっと多くの人がやるようになる。でも、それをどれくらい深く、広く徹底してやるのかは人によって異なる。そして、たとえ希望する研究室・アドバイザーが見つかっても先方が受け入れてくれるかも分からない。

 この本を読みながら、これまでの自分の行いを振り返えることが多かった。今、振り返ると、自分なりにその時その時の自分の理解と自分が持ちえたネットワークのなかで、不思議な縁をたぐり寄せて、これまで来たのだなあと思う。決して、徹底的なサーチをして研究室(指導教官)を選んでは来なかったが、自分に正直な判断をしてきたことは確かだ。

 研究・実験における考え方は、ここに登場する人物たちの言葉に、少なからず共感し、再認識することが多かった。と同時に、自分がこの本で描かれている研究環境で直接指導を受けていたら今どうなっていたのだろうかと思った。自分の研究に大きく変わっているところと、そうでないところがあると思う。

 ノーベル賞受賞者の半分がノーベル賞の系譜に含まれるが、逆に言えば、残りの半分は、そういうところとは関係のないところから生まれている。それでも、決して運だけでは、ノーベル賞級の発見と研究実績を積み上げることはできないはずだ。確かな信念と哲学の上にそれが実現していると思う。この本に書かれていることを実践するのか、参考にするのか、無視するのか、どちらにせよ、研究をする(志す)人間として、知っていても損ではない情報が書かれている。(2021, September 10)

 

『波紋と螺旋とフィボナッチ』

ソングバードを用いた研究について

『小鳥はなぜ歌うのか』

『Nature's Music: The Science of Birdsong』

『Bird Song』